2次試験の前に知っておこう

英検2次は、人が人を評価する試験である。
というわけで、どうしても評価者によるバラツキが生じてしまう。

具体的には、次のような誤差が生じていると考えられる。以下は、人事考課訓練などでよく紹介される、人が人を評価する際に生じやすい心理的傾向である。


1.中央化傾向
「1点から5点をつけろ」と言われても、なかなか1点や5点はつけられない。

2.ハロー効果
全体の印象が影響してしまい、個々の評価項目のスコアがそれに引きずられてしまう。

3.論理誤差
類似した意味の評価項目に対して、同じような点数をつけてしまう。

4.対比誤差
その人への評価をするときに、他への評価を基準にして考えてしまう。
(本来の意味では、評価者が自分を基準に評価してしまう、という意味)


というわけで、それを意識した上で、もう一度各セクションの評価内容と得点を見てほしい。
くり返すが、各セクションは2人の試験官がそれぞれ1点から5点までの間で採点した合計で、各項目、試験官が3点をつけるとそれはその試験官から見て「合格レベルにある」ということである。

分野 評価項目 第1回得点 第2回得点 満点
セクション1 文法の正確さ、語い力、発音(リズム、イントネーション、等も含む)を評価 10
セクション2 1級面接試験にふさわしい発話ができ、どのような答え方をすればいいのかを判断できるかどうかを評価 10
セクション3 要点を整理し、適切な構成をもって相手に伝えられるかどうか、また相手の伝えようとしている要点を理解できるかどうかを評価 10
セクション4 コミュニケーションを持続させるため、また豊かにするために、様々な方法を取れるかどうかを評価 10
Attitude 面接全体を通して、対人コミュニケーションが円滑に進められたかどうかを総合的に評価
合計 (合格点25点) 21 32 43


なんとなく、2人の評価者がそれぞれどういう点のつけ方をしたか、見えてこないだろうか?

まず、「中央化傾向」である。面接がどんなデキだったとしても、よほど失敗しなければ「1点」はつかないだろうと考えられる。たいてい2点から4点の範囲だ。

それから、「ハロー効果」。最初でなかなか良い印象を与えて「4点ぐらいつけても良いか」と思わせることに成功したら、他のセクションだけいきなり2点がついたりするようなことは考えにくい。逆もまた同様である。

それに加えて、「論理誤差」である。セクション2、3、4はそれぞれ英語自体の運用技術ではなく、コミュニケーション力を測る内容で、しかも、評価項目もかぶっている。
セクション2「ふさわしい発話ができ、どのような答え方をすればよいか判断できるか」、セクション3「要点を整理し、適切な構成をもって相手に伝えられるか」、セクション4「コミュニケーションを持続、豊かにさせるために様々な方法を取れるか」というのは、結局聞いていることは同じこと。セクション2「どのような答え方をすればいいのか判断できるか」セクション3「相手の伝えようとしている要点を理解できるか」も裏表の関係だ。
("Attitude" なんていう項目も、まったくかぶっている。個別に評価したら、改めて総合評価時に加算する必要はなさそうなものだが..)
となると、この3つのセクションは同じような点数がつかざるを得ない。たとえば、セクション2とセクション3が「2点と3点」とか「3点と4点」とかいうことはあっても、「2点と4点」ということはほとんど起こらない。
まして、採点には中央化傾向が起こるので、論理誤差の生じやすい2つのセクションの間で、得点が「1点と3点」とか、「3点と5点」とかになるようなことは、おそらくもっと起こりえないのである。「2点と5点」とかは、もうほとんどあり得ない。「1点と5点」までくれば、その近似値は奇跡である。

「対比誤差」も、当然生じていると考えられる。これは受験者のほうではコントロールが効かない部分だが、何人もよくデキる人が続いた後ちょっと力の落ちる人の番になったら、その人は通常より不利になるだろうし、朝イチバンに順番が廻ってきた人がもし午前の最後や昼の休憩後最初の番、夕方最後の番になって出てきたとして、まったく同じ内容で終わったとしても、同じ点数がつくかどうかは怪しい。
僕が落ちた1回目のときは、前の前がガクランを来た高校生、僕の前が米国の4年制の大学を卒業したばかりの女性だった。

一般的に言って、英検の試験官の方が事前に十分な評価訓練を受けてきているとは考えにくい。企業の管理職が人事評価を公平に行うためにする評価のすり合わせのようなものも、たぶん経験してはいないだろうと思う。評価者間でのバラツキも当然有為であるはずだ。

第1回と第2回では、スピーチのデキは第1回のほうが格段によかった(少なくとも、『という手ごたえだった』)にもかかわらず、結果を見ると、第2回のほうが11点も上回っている。
それは、第1回ではどこか序盤でつまらないミスをしてしまい、それがハロー効果となり全体に影響して10点近い減点になった(実は、いくつか思い当たるフシがある)。第2回ではその反省を意識して本番に臨んだから印象を悪くすることもなく、余裕を持って合格点をこえることができた、というぐらいのことだろうと思う。

だからこそ、英検2次試験では、スピーチの準備をすることと同じぐらい、序盤でよい印象与えることに注意したい。
2次試験というものは、全体的な印象がちょっと良くなったり悪くなったりすれば、それだけで各セクションのスコアでそれぞれ±1〜2、2人の面接官の合計で6〜12点ぐらいの点数の変動は普通に起こる試験なのである。

2003/11/30


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