例えば、今日会えませんか?


目が覚めたのは5時過ぎだった。部屋を出たのは5時半前だった。
ロビーで窓の外を見ると、今日こそ本当にくもりだった。空には、晴天時にはありえないほどの雲がかかっていた。
誰か友達が今日の天気は晴れだと言っていたが、と思った。
くもり空なんて、本当にひさしぶりに見た。

昨日の夜見かけた道路工事は、僕が窓の下を見たときには撤収段階になっていた。
1台の車に黄色と黒の柵が次々に片づけられていき、もう1台の車にその他の備品が蛍光ベストを着た作業員によって片づけられていた。

そのうち、おとといまであった黄色い花の鉢がそのままなくなっていて、僕の座っているところからの視界が広くなっていることに気がついた。 すっかり花がしおれてしまったからだろう、と僕は思った。

そのうち、ひとりのおばさんが僕のそばにやってきた。
彼女もまた、昨日の夜ロビーではじめて話をした人だった。
厳密に言えば、僕は彼女とは話をしていない。僕と違う人が話をしているあいだ、間にいただけだ。

「あの。お伺いして、よろしいですか?」
「はい。」
「ステロイド、使ってらっしゃるんですよね?」
「はい。」
ステロイドはどのぐらい使っているのか、透析はしているのか、どのぐらいの量のステロイドになったら退院だと思うか、他の薬も使っているのか、僕はそんな質問をいろいろとされた。薬のことは考えている余裕はなかった。

目が覚めたときから、僕は他のことで気分がいっぱいだった。務めて冷静に考えていたいことがあって、正直、人と話をしている余裕は僕にはなかった。考え事をしているときに、まとまりかけたイメージが外からの刺激で収縮してしまうのはそのときの僕にとって好ましいことではなかった。

朝の時間には限りがある。早くこの時間帯が終わって欲しい。
そう思いながら、僕は彼女の質問に答えつづけていた。

01/07/18


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