「すいません。この車、どちらに行かれますか?」
「隣町のデパートに買い物だ。」
「麻薬取締り強化期間中につき、検問やってます。申し訳ないのですがご協力ください。後ろを開けてもらえますか?」
「はい。いいですよ。」
「ありがとうございます...。あ!」
「?」
「あ!ちょ、ちょっといいですか...。後部座席にたくさんある、この注射器、何の目的ですか?」
「私は医者だから持っているのだ。『七つ道具はどんなときでも体から離すな』とは、やはり医者であった父の厳しい教えだ。」
「それにしても、こんなに大量に...。あまりにもおかしすぎる。ざっと見ても、300本はありそうだ。とにかく、車から降りてこちらに来てもらえますか?詳しく話を聞かせてもらいます。あ、ちょっと、君たちは、彼が乗っていたこのバンをもっと詳しくしらべておいてくれ。」


「免許証を見せてもらえますか?」
「これが運転免許証、これが医師免許だ。」
「ふうん...。あやしいところはない。」
「あたりまえだ。」
「いや、だからこそあやしい。」
「なにをムチャクチャなことを。」
「それにしても、どうしてこんなにたくさんの注射器を持っているのですか?」
「必要になるかもしれないだろう。」
「おかしい。あまりにも非常識だ。」
「失礼だな。常識がどうだなんて、君に言われたくない。」
「覚せい剤等の注射のためではないでしょうね?」
「私はやましいことは何もしていない。」
「いいや。そういうことを言うやつに限ってあやしい。」
「君もしつこいな。」
「いやとにかく、もし何もやましくないのなら...。」
「ボス!」
「ん?」
「後部座席とバックシートから...。」
「なんだ?」
「聴診器が22個、血圧計が13台、包帯が72包、メスが大小合計88セット、鉗子が222本、眼底鏡が52枚見つかりました!」
「なに...!」
「...。」


「どうも...ご協力ありがとうございました。それから...。さきほどは大変失礼いたしました。」
「あ、いや、いいよ。気にしないでくれ。」
「それにしても...。いつもこんなに道具を持ち歩いてるのですか...?一人で使うために?」
「かばんに入りきらないからこそ、いつも車を使って移動しているんだ。医者ってのは、まったくもって、因果なばかりで割に合わない商売だよ。」


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