初夏の推想

初夏の推想


「自殺願望は過去にあったか?」

最初に精神科に行ったときにそういう趣旨の質問をされて、「なかった。」とそのとき僕は答えたのだが、今朝になって、こういう死に方が理想だろうと思っていたものがあったことには気がついた。
ピストル自殺だ。

随分前に読んだ「完全自殺マニュアル」によればいちばん楽で迷惑のかからない自殺方法は首吊りらしいとのことだったが、人の迷惑を最小限に抑えることができるならば、ピストル自殺も負けずに推奨されるべき方法だと思う。
首吊りはやってみないと分からないが、落ちるまでが苦しそうなのが僕から見た難点で、その点ピストル自殺なら、初心者でも道具さえあればおそらく引き金さえ引けばあっという間だろうという期待感がある。確実に的を狙う覚悟さえあれば、そうそう失敗するものでもなさそうだ。

今なら。
例えば、大き目の麻袋か何かを頭に被ってからやるかな。
弾丸は袋の向こうまで貫通するだろうが、頭のほとんどの部分は、袋からはみでることはないだろう。
それならば、遺体の処理も楽にできるはずだ。

もっと前には、誰か僕の知らない間にうしろから思い切り斧でも投げて、僕の首を一発で吹き飛ばしてくれないものか、と思っていたことがずいぶん長い間あった。
死んでしまうなら一瞬が良いとは、当時から思っていた。


1.死は悲しいことではない。
会えなくなってしまう、話を出来なくなることなどは残念なことだが。これは仕方の無いこと。
2.本人にとっては、死は眠ることと同じ。
3.これは言い方が変で、私は宗教を持ってないのですが、がんなど死期を悟って死ねるのは、実はまるで祝福された死に方なのかも知れない。
4.交通事故などで瞬時に死ぬことも、恐怖なしであり、これはこれで幸せかもしれない。

友人が以前メールしてきた。

死感のことはよくわからないが。
僕は死ぬときには、なるべく人に泣かれたくない。
いったん死んでしまったならば、もう僕のことなんかなるべくさっさと忘れてもらいたいと思う。

そんなことを考えていたら、ロビーの窓の向こうからミンミンゼミの声が聞こえてきた。
今年はじめてだった。

01/07/14

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