ドミニクの堅実な働き
今日の「フランス語会話」でなんと言っても注目していたことは、
「楳図かずおにかき回された前回放送のショックを引きずっているか。もしそうであればいつごろ修正できるか。」
であった。
ここで、おたよりを紹介しましょう。
「NHKマニアの友人」さんからです。
> きのう深夜のフランス語みました?(笑)
ああ、頭が痛くなりました。
凄いです。
楳図かずおって人は凄いとは思ってましたが、あんなとは・・・
彼の立っているところだけ異質な空気が漂ってました。
さすが怪奇漫画家。
素敵なお洒落なフランス語という固定イメージを見事に崩してくれました。
唄は正直、聞きたくなかった・・・悪い夢を見たという感じですね。
楳図かずおの観察、鋭いっ!
楳図かずお以外のキャラを観察するのが正解でしょう!
私もそっちに目が行きました。
いつものメンバーがこの凄いキャラを相手にどう振舞うのかは見ものでした。
今日は復習シリーズの回だった。前数回の番組でやった内容を振り返るのだ。
パトリス、遙ちゃんが登場した。
・・・やっぱり、なんだかおかしかった。
遙ちゃんはあいかわらずお疲れの感じ。立ち姿に前回の疲労感を残している。なんだか表情も冴えない。
パトリスも、とりあえず自分の動作をしているのだが、なんだか動作の相手を求めてうろうろしているようなイメージだった。
サッカーに例えれば、中盤でボールを受け取ったはいいが、次のパスの出しどころを求めている、というところだ。
前節は、強力キ○ガイフォワードにこれでもか、としつこくパスを送るだけだったからな。
勝手が変わってしまって逆に戸惑っている、という印象だった。
・・・と思っていたら、「あてんしょん・しるぶぷれー」と、ベアトリスが登場した。髪型は、やっぱり前と同じだ。
「このあいだの放送見て、おもしろかったよー。」
とベアトリスが言うと、遙ちゃんが
「ベアトリスも、かわいかったよー。」
と、すぐに答えた。
(うーん、そこから、入ったか)
僕は前回放送のときに遙ちゃんが吐いた毒のことを思い出した。
やはり本人も、後で言いすぎだったと思って気にしていたのだろう。
だから、1週間経ってまた会ったときに、思わずその話題から入ってしまったのだろう。
(なんていうのは、もちろん全部僕の考えすぎかもしれないが(笑))
・・・とは言っても、やはりこの2人は前回のショックを引きずっているように僕には見えた。
番組序盤からしばらくの間、遙ちゃんはひとりでフランス語の表現を言うときにもちょっと目が泳いでいるし、何か言い終わるとすぐに隣のパトリスのほうを向いて助けを求める風だった。
自分が何か言い終わって、うまく行っても行かなくても自信満々の笑顔があって、その後間があって、笑いがあって、パトリスが受け継ぐ、という感じではない。
「ひとりでは間が持ちきれないです、はやくパトリス何か言ってください。」
と言いたくなるような不安感に悩まされている感じだった。
やっぱり、「ワンダフル記念写真タレント」的扱いをされたことがショックだったのだろうな。ムリもない。あんなことされたら、自分のプレーに自信をなくすよ。表情も冴えなくなるさ。
でもがんばれ。君は今年のNHK語学のウリ(と言われてる、と、僕のNHKマニアの友人が言っていたほど)のスーパースターだ。
「井川遙が出ているなら、僕も早起きして『フランス語会話』見ようかな。」
と、こないだサッカーチームの先輩も僕にメールしてきたぐらいだ。
前回放送の悪夢を払拭できれば、すぐにまた自信満々の遙ちゃんに戻れることだろう。
パトリスはパトリスで、毒に満たされた相手がいないことでかえって空虚な空間に魂が抜け出してしまったような感じだった。前回放送で何かを使い果たし、今回は対象を見失っている、というところか。
目が宙に浮き、受け手不在の不可解な動作をすることもあった。およそ彼らしくない。
まあ、前回あれだけ予定外のエネルギーの放出を余儀なくされたのだ。今日は仕方ないだろう。
アクアリウムは、やはりまだ掻き回されたままだったのだ。
大木教授とドミニクが登場した。
大木教授は今回は「抜け番」という感じだった。ノーコメント。
ドミニクはフランス的内気な表情に満たされ、存在感がなさそうな雰囲気なのだが、うぐいす色のきちっとしたYシャツと下の黒のシャツとがあいまって、そこがかえって今日は目をひいた。
今回、ドミニクはよかった。
前回、ドミニクはかわいそうなぐらいに目立たなかったのだ。
遙ちゃんがスキットに挑戦するシーンでは
「君に愛の歌を作ったんだ。」
なんて言った瞬間に楳図かずおに場面をむちゃくちゃにされてしまったし、
楳図かずおとドミニクが歌う、というシーンではドミニクは画面左後ろに追いやられて、楳図かずおが正面でひどい衣装、ひどいフリツケで好き勝手やっている間、直立不動でひとりバックコーラス状態だったのだ。
(今日ぐらいは、ドミニクを中心に持っていきたいよな)
今日のドミニクを見たとき、僕はそう思った。ドミニクがいちばんいい目をしていたのだ。
そして、今日のドミニクは光っていた。
サッカーに例えれば、遙ちゃん、パトリス、教授と言った他のレギュラーキャラが動きを落としている中で、早い段階で相手のボールにつめていってリズムが崩れるのを未然に防いでいくような働きをしていた。
お休みの教授の横で彼がシンプルに喋るだけでリズムができたし、彼が内気っぽく存在感のなさそうな動きをすることがかえっていつものリズムに近づけるきっかけになった。それでも皆の呼吸がかみ合わずにもどかしい時間帯が続いていたのだが、彼のソロコーナーになって彼が、"Love me, Please Love me"をいつもどおりの安定した働きぶりで歌ったことで、やっと今日はじめて番組が落ち着いた、という感じであった。
今日の番組はドミニクがいなかったらどうなっていたか分からなかったと思う。
彼は、自分のポジションの仕事を的確にこなした。前回のパトリスがファンタジスタとしての能力を最大限に発揮して番組をなんとか形に持っていったように、今回のドミニクは、職人のように自分の仕事を的確にこなしていくことで「フランス語会話」というチームのリズムを整える働きをした。
ユベントスの選手で言えば、アントニオ・コンテやビリンデッリのような働きだった。
今日の放送は、彼を中心とした動きでなんとか中盤以降のリズムを作っていったようなものだ。
「ドミニクあっての今日の『フランス語会話』だった。」
と言ってさしつかえないと思う。
今日のドミニクには、僕は高い点数をつけたい。
ベアトリスも、やっぱりかなり参っていたようだったな。
番組の終わりのほうで遙ちゃんとチョコレートをくれ、くれない、なんていうちょっとしたやりとりがあったのだが、遙ちゃんが
「ごめんね。このチョコレート、中身カラだからあげられないの。もう食べられちゃったのよ。」
みたいなことを言ったら、そんなちょっとしたことなのに、番組の最中にもかかわらず、彼女はすごく巨大なものすごい悲しい顔になって泣き叫んでいた。あんまり大きな顔になってしまったから、パトリスがその後ろに隠れて消えてしまったぐらいだ。
もう他のキャラが自分を取り戻しかけていた時間帯だっただけに、かえって異様に目立った。
もともと出番が少ないから、彼女もリズムが作りにくいよな。
彼女の中でトラウマが残っていないか、ちょっと心配だ。
文化コーナーでは Le loi danse(王は歌う)という映画の紹介をしていたのだが、その中で、
「太陽王ルイ14世が沼に落ち、病気になってしまった。医者はさじを投げたが、そこに王を愛する踊りの振りつけ士が現れて、彼のために一晩ばよりんを弾いた。そうすると奇跡が起こり、王の病気は治った。」
というエピソードが紹介された。
(これ、は、僕、に、びよらじょーくを作れ、ということか?)
なんだか、課題を与えられた気がした。ちょっと考えておこう。
「フランス語会話」の小さなアクアリウムは、今日もまだぐちゃぐちゃだった。
しかし、ドミニクの堅実なプレーにより、なんとか修正のきっかけを得た。
01/06/07
管理人にメールする
「テレビの感想」トップへ
こねこねのさいとトップへ