いまだに・とらぶる・すぽっと

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「依存症の時代」の今日のテーマは、

「子どもの虐待を依存症の立場から見る」

ということだったのだが。


今日の解説役は保健婦さんだった。
10年前に比べて彼女の子どもの虐待防止センターでは、児童虐待の相談が10倍以上に増えている、ということだった。
増加の理由は、
・家族の中での暴力への社会的感心が高まってきたこと
・児童虐待が犯罪として認識されるようになったこと
・不況など、家庭不和の潜在的要因が増えていること
なのだそうだ。


今日は、2つのケースが紹介された。最初は、30代のA子さん。
「育児疲れからたたいてしまう」
というサブタイトルだ。

これは簡単に言うと、「いい母親になりたい、いい母親を演じたい。いい妻でもありたい。」という気持ちが強くて、育児がうまくいかないストレスを他で解消しないままに自分の子どもにぶつけてしまう、というところだった。
「1回やると、平気になってしまいました。ダメだと分かっていてもやってしまいました。わざと泣かせて、それですっきりしなくて、のくり返しでした。」
とか、そんな話だった。友人ができて自分が児童虐待をしている、と話せるようになったらやらなくなったそうだ。

「母親が追いつめられる原因のひとつは、核家族です。」
保健婦さんが言った。24時間の子育てでは、地域社会とのつながりが弱まった今では、父親の役割も重大です。そんな話だった。
「いい母親でなければならない」
とかいう社会からの無言のプレッシャーもキツい、ということらしい。

「密室の関係」
という言葉が、やめたくてもやめられない、という状態へのキーワードらしい。
密室関係だと、誰かが止めてくれないと、エスカレートしていってしまうということだ。


次のケースが、よく分からなかった。
「虐待の原因は」
というサブタイトルだったのだが。

B子さんは40代。
最初は、言うことを聞かない子どもにちょっと手を出したのがきっかけだったらしい。
それから、きっかけがささいでも鬼のように怒るようになって。
彼女の場合はA子さんと違って、やってるときは怒りに満ち満ちていて、罪悪感がなかったらしい。

そのうち、児童虐待をしている親のグループに入った。
で、よくあるパターン(中略)で自分の中に原因を見つけた。
それは、子ども時代に母親に対して絶えず感じていたプレッシャーだった(内容は省略)。

それに気がついて、突然彼女は母親にたいして昼夜を問わず電話をかけたりし、溯っていろいろ文句を言いはじめた。
母親は辛抱して、聞いていた。
母親に文句を言うときは、子どもを虐待した後とは違って、B子さんにまるで罪悪感はなかったそうだ。
そのうち、母娘の関係は改善された。

「彼女を傷つけた私が聞くよりなかった。」
母親がそう言った。彼女は、B子さんが文句を言いつづけている間、ずっとごめんねをくり返していたそうだ。

B子さんは母親に文句を言うようになった7年前、子どもが中2になったころから児童虐待はしなくなったが、今は今で精神的に困っている。
責める対象を失ってしまって、自分がどうしたらいいのか分からないのだ。

「適切な相手に吐き出すこと、聞いてくれる相手を見つけること、その相手が批判なく聞くことが大切です。」
という保健婦さんの話だったのだが。


まず、B子さんの母親。
B子さんにかまいすぎて、昼夜を問わずかかってくる電話でロクに眠れないままに仕事に行くことも続き、非常にキツかったそうだ。

「そういう時期は乗り越えて2人は仲良くなりました。」
と聞けば美談だが、簡単ではない。もっと違う方法はなかったのか。
そりゃ家族だし、もともと自分のしたことが原因とはいえ、だからと言ってあんまり負担するのもどうかと思う。
B子さんにもっと他のはけ口を探してもらう努力はできなかったのか?
長年ひとりでためこんできたものをいちどに吐き出されたら、そりゃたまらんだろう。

次にB子さん。
おかあさん生きてたから直接言えたけど、何らかの事情でもう苦情の訴えようのない相手となっていたら、彼女はどうしたのだ?
対象を変えることで児童虐待は一時的に解決したけど、母親に転嫁させた(というか、戻した)だけだ。
そりゃ、本来の対象かもしれないが、あんまり一方的に負担をかけるのもどうかと思うぞ。

それで、結局今心のバランスを失っている。きっと彼女は、母親が「苦情の訴えようのない相手」になっていてかつ児童虐待をしなくなっていたとしても、今の状態になっているぞ。
児童虐待はもうここ7年しなくなった、という話だったが、7年の間で他に何が変ったのだ?
彼女は精神科にかかっているそうだが、その間そこの先生は、彼女に何をしてきたんだ?
もしもこれだけ経っても前向きになれないようなら、たとえばまだ彼女は他に問題を抱えているかもしれない。きっと、彼女はまだ自分と向き合いきれてないのだろう。

保健婦さんの話も、2つめのケースではなんだかちんぷんかんぷんだった。
僕がどうかな?と思うのは、無批判であることで、そりゃ、最初に自分の問題に思い当たったて自己の再構築のために人に語るときならとにかく語らせたほうが近道だけど、あんまりそれをやらせ続けていても、本人のためにもならないし、聞く人のためにもならない。そこからの専門家の果たすべき役割とかについて指摘しないでいいのか?
7年前から児童虐待をしなくなりました、なんて側面だけ聞けば美談だが、よく見てみれば、何度も言うけど7年前の段階から結局彼女はまるで回復していない。
本当にいまだに無批判でいいのか?彼女に、何か努力をしてもらう時期なのではないのか?
「とことん文句を言って気が済んでよかったですね。」
だけで終わりじゃないぞ。彼女がこれからどうしていくべきか、何もコメントしないでいいのか?

最後にNHK。
B子さんの自立、回復までを扱ってくれないと、視聴者は困るぞ。
彼女のとった方法はすばらしかったとは思わないし、彼女に問題は残ったままだ。
「これからB子さんがどうやって自分を取り戻していくか」が焦点なんじゃないのか?
「問題はすりかわったままです。」で納得できるわけないじゃないか。

B子さんが虐待していたのは男の子で、彼が中2のころまでの話だ。
彼の成長という視点なしに話を構成するのは、ちょっとムリなんじゃないか?
(A子さんの場合は、子どもが6才ぐらいまでの話だった)

それに、両方の話に共通なのだが、親は虐待をしなくなったからもうよい、というものでもないだろう。
虐待されてきた子どもの精神衛生の話とかはどうなるのだ?
例えばB子さんの子どもが将来になって、
「僕が今精神的に困っているのはアンタのせいだ!」
なんてB子さんに毎日電話かけてきたらどうするんだ?くりかえしじゃないか。ホントに可能性あるぞ。

なにより、どこがどう
「依存症の立場から見た児童虐待」
だったのか、まるで分からなかった。

明日は「回復に向けてのセルフヘルプグループ」らしい。とりあえず、明日も見てはみる。
問題がすっきり解決してくれないと見るほうもつらいぞ。ていうか、忙しい時間を惜しんで見てる価値がない。

01/06/13


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