体験!メディアのABC

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月曜日はやっぱりいつもと違う。どういうわけだか、自分をもてあましてしまう。
やっぱり朝から教育テレビを見ないからだ。

先週はいろいろあったし、順調そうだった経過もちょっと小休止。
投薬のリズムも変わった。とかいろいろあったのだろう。
朝の注射が終わってから、僕は寝てしまった。

「こねさん、新しい学生さん、紹介します。」
先生のひとりが僕のベッドに学生さんを連れて来たとき、僕は目を覚ました。
昨日珍しく昼寝をしたが、今日はなんと、朝まで寝てしまった。薬を使うようになってから、朝寝たことなんてあったっけ?考えてみたが、やっぱり記憶になかった。
まるで寝ぼけていて新しい学生さんの名前もよく覚えられなかったが、彼らが帰ったあと、とにかく僕はなんとか目を覚ました。

とにかくそんなわけで、教育テレビをつけた。理由はなかった。ちょうど朝10:00になったぐらいだった。


テレビには、2人の人物が映っていた。子役っぽい女の子と、NHKっぽいラフな男の人だ。

女の子は髪なんかポニーテールにまとめちゃって、元気いっぱい、という感じ。目立つ感じのかわいい子だ。15才ぐらいかな?
そのTシャツは一言でいえばスーパーマン柄。
袖が水色の黄色いTシャツ。胸に大きく「S」と書いてあって、さらに"Girl"なんて書いてある。

NHKっぽい男の人は、NHKの職員風だった。

2人で、何か打ち合わせをしているようだった。
僕は、その女の子、とその格好に興味を持った。打ち合わせの様子も、何か起こりそうだ。
何が聞けるか興味がある。僕はイヤホンを耳に入れた。


NHKっぽい男の人が言った。

「今日のインタビューは、あの、有名な、池上某さんだ!」
「ええー!」

僕の知らない人物の名前が出て、女の子は驚いた。


画面はビデオに切り替わり、その池上某なる人物が紹介された。

「池上彰さんは、NHK教育テレビの人気番組、『週間こどもニュース』のキャスターです。」
彼がその「週間こどもニュース」に出演している映像が映し出された。NHKの記者らしい。いいおじさんだ。

(知らない・・・)

しかし、きっと女の子にとっては有名なのだ。

この番組は(というか、少なくともこのコーナーは)、どうやら、少年少女がインタビューというものについて知る、という狙いの企画らしい。
どういう風に番組が進行していくのか、僕はますます興味を持った。この元気いっぱいな女の子がこの池上氏にどうインタビューしていくのかにも、興味を持った。
僕は、とりあえずこれからこの一連の経過を見届けよう、と思った。


インタビューは、その女の子、NHKぽい人が2人で池上氏に話を聞く、という形で進んでいった。
女の子がいろいろと質問をし、NHKぽい人も質問していた。池上氏は、
「ニュースで気をつけていることは、正確に分かりやすく伝えること、どういう風に伝えればよいのか考え、伝える相手について想像することが大切です。」
なんていう話をしている。

フンフン、と、聞き役の2人はメモを取った。


インタビューのシーンは終わり、2人が自分のメモをまとめる時間になった。
メモを見ながら、強く印象に残ったことを3つにまとめる、ということで、2人がそれぞれ大きな紙に自分がインタビューで彼から聞いた、と思うことをまとめた。


再び、3人で揃うシーンになった。

女の子が先に自分のまとめを見せた。
・ニュースは分かりやすく、早く、深く
・いろんな人と会って話をすること
・子どものころは人見知りをよくしていた
というのが、彼女のまとめだった。彼女の名前は「あかねちゃん」だった。大沢あかねというらしい。どこかで聞いたことのある名前だ。たぶん有名だろう。
「池上さん、という人に興味を持った。」
と彼女は言った。

NHKぽい人は、中谷某と言った。彼のまとめは、
・(これは何だったかな?ちょっと覚えていない)
・歯ごたえのあるニュースを(とか、そんな感じだったかな?)
・伝える相手のことを考えて
の3点を挙げた。

へえ。2人とも僕の印象と違うなあ、と思った。
「違うものですねぇ。」みたいなことを中谷氏が言う。あかねちゃんもそう言って驚く。
「違うなぁ。」と僕も思った。

「同じ話を聞いても、人の感じ方って、違うのねー。」
ということで、話は進んでいくのか、と思いきや・・・

さらに、池上氏が、
「これが、私の伝えたかったことです。」
と、自分で言いたかったこと3つをまとめた紙を出してきた。
・ニュースは役に立つ
・正確に、早く、分かりやすく
・自分の頭で考えよう
というのが、それだった。これまた、ぜんぜん違う。

「ありゃー。」
と、僕は思った。出演者も、同様の驚嘆の声をあげた

「この聞き方は正しい、これは違う、というわけじゃない。いろんな見方を見て、自分の見方が見えてくる、ということだと思うんです。」
みたいなことを、池上氏が言った。


再び、あかねちゃんと中谷氏との構図になった。
「聞いた通りに伝わるわけじゃない。話をしてくれた相手のことを尊重してまとめることが大事なんだろうな、と思いました。」
みたいなことを彼女が言って、いったんまとまった。


シーンが変わって、プロのインタビュアーが登場してきた。新聞記者の女性だ。
実際に取材をするシーンが紹介された。相手は舞台監督だ。
彼女は、舞台監督という仕事はどこが大変なのか、チームワークとか言った点に、どう注意しているか、という点を中心に取材したい、と考えていたようだ。

「今日は取材に応じていただいて、ありがとうございます。」
その舞台監督が仕事をしているシーンがいくらか紹介された後、彼がインタビューに応じるシーンが流された。

彼女によれば、インタビューの「プロのコツ」というのは、
1.狙いを絞って聞き、テーマにそって質問する
2.聞いたらすぐにまとめる
3.くり返しチェックする
ということらしい。

「人に話を聞いて文章にするということは、聞き手が問われることだと思う。」
みたいなことを彼女が言って、取材が記事になるところまでが紹介されて、番組は一気に収束した。


体験!メディアのABC

とタイトルが出て、番組は終わった。


人の感じ方というのは、本当にそれぞれだ。同じものを見ても、感じ方はぜんぜん違う。この番組だって、他の人が見たら違うところに興味を持って、当然に違う感想を持つだろう。

僕は毎日のようにNHK教育テレビの外国語講座を見ているけれども、その感想はいつも特異なものだ。サッカーの試合を見たって、記事を読んだって、思うところは尋常じゃない。
はっきり言えば、そりゃ個性だ。

人は結局、まわりで起こっている物事について、自分の持っている座標軸で受け止められる範囲でしか分からない。自分がアンテナを持っているタイプの情報しかキャッチできないし、アンテナのサイズとか材質とかの違いもあって、同じように同じ塊の情報を受け取っても、理解のしようはさらにまた人それぞれになってしまう。
まして記事にしようと思ったら、それを再加工して自分のところから発信しようとするのだから、自分が問われる、と感じるのは当然だよな。

15分の短い番組ではあったが、いろいろ考えさせられた。


・・・と思っていたら、このあと「ストレッチマン」がはじまった。
例の、NHKマニアの友人が推奨していた番組である。

01/06/04


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