寝すごしてロマンス

寝すごしてロマンス


寝すごした。目が覚めたら、6:47だった。
しまった、と思った。2度寝をしてしまうかもしれない、とは思っていたが、よもや寝すごしてしまうまでとは。木曜日はフランス語会話の日だというのに、


昨日の夜は、早めにミンザイを飲んでしまった。
夜起きてやることがない、というのと、ひさしぶりに早起きしたい、というのがその理由だった。
ここのところ、目が覚めるのは早くても4時台後半だった。

今朝目が覚めたのは、3:15だった。
よっしゃ。とは思ったが、まだ外はまっくらだった。これでは、まだロビーに出ても日記は書けない。
僕は、うがい薬、コップ、はみがき、はぶらしといったいつもの道具に加えてCDプレーヤーと2枚のCDを持ってロビーに行って、CDを聴きながら時間が経つのを待った。
病院の前の道では道路工事をやっているようだった。入院してこのかた、そんな光景は見たことがなかった。

(昨日の朝は雨が強かったな)

外を見ながら僕は、昨日の朝のことを思い出した。昨日僕が日記を書きはじめたときはたまった雨のしずくが建物の窓枠のところに落ちる音だけが聞こえていただけだったのだが、それからしばらくして気がつくと、窓の外は大雨になっていた。
それで今日はいちにち大雨になるのか、と思っていたら、午後には晴れてしまった。
先のことなんて、分からない。


モーツァルトの40番を聴いていたら少しは外が明るくなってきた。照明は落ちていたのでロビーはまだ日記どころではなかったが、ナースステーションの灯かりがもれてきていて、エレベーターのそばのパイプイスに座れば、まあ暗くない環境である、とは言えた。
僕は、イスに座って日記を書きはじめた。

昨日はあんなことがあった、こんなこともあった。こんなことを思った、こんな気分だった。あれが気になる、これも気になる。あれはどうでもいいことだ。どうでもいいから書いておく。
そんなことを1ページぐらい書いた。書くことなどない。昨日の晩の早いうちに、昨日何があったとか何をどう思っているとかほとんど書いてしまった。相変わらず汚い字だ、と、自分でも感心した。
日記は時系列を無視して書いてもよいのだ、ということに僕が気がついたのは最近のことだ。

日記を書き終えて、ロビーに戻ってCDを聴きながらしばらく窓の外を眺めた。今日はくもりのようだった。
窓の外を眺めながら、考えたことがあった。最近連続で来たいくつかのメールのことだ。

ひとつはフロリダにいるベネズエラ人の女の子からのもの。
「今度の日曜日に私の誕生日パーティをやるから、是非来てね。」
という内容だった。
ひとつは今南米を旅行していると思しき日本人の女の子からのもの。
「いまアレキパです。」
というタイトルだったが、開いてみると中身はカラで、hotmailはどうのこうの、というウェブメールによく見られる表記だけが虚しく存在していた。アレキパは、ペルーの観光地ひとつだ。
それから、僕が入っているメーリングリストに来たちょっとした質問と、それに続くいろんな人の回答のこと。
僕もなにかコメントしようかと思ったのだが、機会を逃してしまった。

時計は5:30をまわったのだが、そこからは時間はいっこうに経たなかった。どうもいつもと勝手が違う。やはり、3:30では起きるのが早すぎたか。
そんなことを思っている間に、眠くなってきてしまった。
僕は、ベッドに戻って別のCDでも聴こうと思って。

それきり寝てしまった。


フランス語会話は最初寝ぼけていて、ベッドに横になって見ていた。

この語学番組でおもしろいと思うものがある。
聞き取りに挑戦するコーナーみたいなのがあって、フランス人が街中でなにか言うシーンを再生して遙ちゃんが聞き取るのだが、それを最初100%の速度でやったあと、60%に遅めて流し直すのである。声のピッチも下がらないように工夫して、純粋に遅くだけなるようにしている。

フランス語に慣れない僕としては、だいぶありがたい工夫だ。
(どうせわからない)
なんて思う前に、とりあえず聞いてみよう、という気になる。

「中国語会話」には「声調弐号」という道具が出てくる。
陳さんが新スタンダード40を声に出して言ったあと、彼女の発音のピッチのログが右に時間軸をとって表示されるのだ。
で、稚広ちゃんがくりかえして発音して、それも同時表示されて比較される。
実にわかりやすい。

この2つは、特別NHK語学でおもしろい工夫だと思う。


スキットは2回目のフランス語字幕でのしかみれなかった。
文化コーナーではフランス人ファッションデザイナーのインタビューがメインの内容だった。
で、それらを聞いていて。

ここ何週か思っていたのだが、さいきんフランス語に慣れてきたと思う。
インタビューはもちろん日本語字幕ナシではどうにもならないのだが、スキットぐらいだと、全体がつかめるかはどうかはともかく、単語は結構拾える。フランス語字幕を見れば、内容に対しても自分としてはそれなりだ。

(やっぱりロマンス語なんだな)

と、改めて思った。スペイン語と系統が近い言葉だ。

フランス語会話を見るにつけ、僕は入院する前、最後にスペイン語のサークルに行ったときにあった人のことを思い出す。
はじめてみるちょっと年配の方が、上級コースに入って来た。
彼が、スペイン語はほとんどはじめて、というようなことを言っていて、動詞の活用はかなりユルいものでもあんがいダメで、発音も微妙にあやしい。
その代わり、とにかく読めば分かる。

どういうことなのだろうと思って聞いてみたら、
「フランス語をずっとやってました。」
という答えが返って来た。なるほどと思った。そういうことなのか。
・・・というか、そんなに長い時間接触していたわけではなかったが、フランス語の力は明らかにすごそうだなという印象だった。
後に、彼をメインにおいて新しくフランス語のクラスを作ろうか、という動きもあったらしい。
僕のスペイン語のサークルは、ポルトガル語、英語、中国語、日本語の一大語学サークルの一会派である。
他の語学の雰囲気までは知らないのだが。

「フランス語なんて、ローマ時代の地方の方言みたいなものだったんですから。」
そう言って彼はフランス語のことを揶揄していたが。


スペイン語と他のロマンス語について、
「スペイン語ネイティブはイタリア語は70%分かる。ポルトガル語は60%分かる。フランス語は40%分かる。」
という話を聞かされたことがある。

僕がかつてブエノスアイレスで出会ったイタリア人旅行者(注:カッコよかった)は、アルゼンチンに旅行しよう、と決めて旅行にでる1月前からスペイン語の勉強をはじめた、と言っていた。当然彼は、やっと南米歴3ヶ月になろうかという僕よりも、ずっとずっとキレイなスペイン語を話した。

「似てるからね。」

ガウチョ・フィエスタのツアーに行くバスの中で話をしたとき、彼はそう言ってサングラスのむこうでニヤっと笑った。イイ男だった。

僕もこないだイタリアに行ったときは、簡単な用件はほとんどイタリア語で済ませていた。


やっぱり、似ているのだ。フランス語もスペイン語と。
僕にとっては、発音に慣れてなくて、入れ替わっている単語がそれなりにあって、でもそれだけだ。イタリア語よりは似てないけど、やっぱり何か同じ気がする。単語だって、スペイン語とは形が大きく異なっていても、おそらくは結局英語やイタリア語には似ている言葉があったりしそうな感じだ。
耳に慣れれば、フランス語もおもしろそうだ、と思う。
(とは言ってみても、そこから先が長い、ということが分かっているから容易には手をだせないが)


で、そのスキットなのだが、今日はいつのまにか、エミとひし形美青年が、なぜか2人きりで遊ぶシーンにまで話が発展していた。
ひし形美青年が彼女を馬に乗せたりして、ベンチで仲良くよりそったりしている。
うーん。ロマンティックだなぁ。フランス。
さすが、"Primiere Romance"(←フランス語会話スキットのサブタイトル)

でも、あんまりやりすぎると、僕の友人がやきもちやくかもしれないぞ。
くそ!ひし形美青年め!


ファッションデザイナーのインタビューでおもしろかった、と思ったのは、

「ファッションはくりかえされるものです。」
という彼女の発言だった。

アイデア自体は昔からあるものなのだが、素材や加工技術の進歩によって、これまで実現できなかったようなことも実現できるようになる、そこに敏感であるかどうかが重要なんだ、ということが言いたかったのだと僕は解釈した。
彼女の仕事場には、昔の雑誌がたくさんあつめてあって、古い写真やらなんやらが壁にいろいろ張ってあったりする。


彼女のデザインするオレンジ色を使ったドレスが評判だ、という話のあと、遙ちゃんが
「私もオレンジ好きです。ビタミン・パワーっていう感じで。」
みたいなことを言った。今日の彼女の着ていた服はオレンジではなかった。

実はドミニクの今日の服こそオレンジ色だったのだが、もちろん彼はそこでムリヤリ駆け出して登場してきて自分を引き合いにしてツッコミを入れたりはしない。
彼は堅実な競技者だ。

彼は今日もあいかわらずフランス的に、ミッシェル・ポルナレフの"Love me, Please love me."を堅実に熱唱していた。
歌の終わりでドミニクがアップになったときに、黒い色をしたマイクの柄のところに白抜きゴシックで

NHK

と書いてあることに、当然僕は気がついた。

遙ちゃんがオレンジ色を着て番組に登場してくるのがいつのことなのか、ちょっと気にしておくことにしよう。

01/06/21


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