今日はロシア語

今日はロシア語


病棟の起床時間は6:30なのだが、最近夜更かし気味の傾向にあって、この時間に起きられない。僕が起き出すのはその10-15分後ぐらい、看護婦さんが血圧を測りに来る時だ。
いちばん通路側のチョーさんのところに看護婦さんが来た気配で僕は目を覚ます。そしてさっそく教育テレビをつけた。


最初何なのか確信が持てなかったが、どうやらロシア語講座のようだった。
左からややラフな学者、うら若い好青年、ボルシチ美女、という配置だった。ボルシチ美女は日本語も上手に話した。

驚いた事にもう5月だと言うのに、まだletterの練習をしていた。ひどく教室っぽいセットで、ボルシチ美女がホワイトボードにletterを書いて、うら若い好青年がそれを真似しながら書いた後、発音を真似る、ということをやっていた。


次のスキットは、売店のような場所が舞台だった。
雪の多い地域に厚い石で建てられた重厚な建物、というイメージのところだった。駅かなにかだろうか?

ひとりの男が暗い表情をして歩いてきて、低いトーンで、店番とおぼしき、氷のような表情の金髪のロシア人娘に話しかける。
「すいません。出口はどこですか?」
「出口・・・。出口は左です。」
答える彼女は始終氷のような無表情で、眉一つ動かさない。
男は礼も言ったか言わないかぐらいで、うつむき加減で去っていく。

続けて、別の男がやってくる。ゴルゴ13にでてくる、ちょっとエルヴィス・プレスリーに似ているが顔が大きくてアゴの大きいチンピラ、という感じの男だ。
彼もやはり低いトーンで氷の女に尋ねる。
「レジはどこですか?」
「レジ・・・。レジは右です。」
氷の女は氷の表情で答える。

男は続けて尋ねる。
「あと、トイレはどこですか?」
氷の女は氷の表情で答える。
「すいませんが、私どものところにはありません。」
ゴルゴチンピラ男は首をわずかに傾け、ちょっと目を見開いて困ったような表情をする。
氷の女は氷の表情のままだ。


ここでスキットが終わる。


続けて、ロシア文学紹介のコーナーになった。
今日紹介されたのは、ドストエフスキーの「白癖」だった。

一人のロシア人文学者が、こちらを見据えながら一人で喋った。字幕だ。
セットはひとことで言えば、"藤沢辺りの裏地にちょっと入ったところにある、ヒマな時間帯はヒマなバー風パブ"という感じで、照明は暗くて、奥にはソファーがあって、絵がかかっている。
そして彼はそれより手前にある黒壇風の机に、椅子に座って本を広げている。
その机向かって左方には赤い傘の欧熱ランプのスタンドが置いてあり、暗い照明の中で、彼の顔の右側だけが薄黄色く照らされている。

「この作品の一番の特徴は、女性主人公が破滅的な性格をしていることです。」
彼は呟くようにそう語る。彼の着ているセーターはもちろん黒だ。わずかに持ち上げて動かす手のひらとその手指の隙間にスタンドの光が当たって、彼の血潮の色が透けて見えた。


続いて、「聞きかじりのおろしあ」のコーナーになった。今日はウラジオストクだった。
1992年に開放されたこの地区には日本人観光客も多い、とのことだった。

「シベリア開拓の時に連れてこられた狼たちにより、虎はいなくなってしまいました。」
当地の博物館の女性館長、とおぼしき人物は語った。飾られている美しい狼の剥製の映像が出てきた。
「人間は一人で狼と戦うことはできません。彼らはとてもかしこいのです。」

01/05/06

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