さよなら黒毛馬

さよなら黒毛馬


今日のロシア語会話のスキットは、
「これはあなたの席ですか?」
だった。

スキットは、バスの中の一シーン。最初は正面からのアングルだ。
多数の乗客が座席に座っている。

そこに、後ろのドアから男が入ってくる。
以前にどこかの駅で出て来たゴルゴチンピラ男だ。
彼は席を探しながら前に歩いていき、通路側に人が座っていない席を見つける。彼は窓側の女性に話しかける。
「これは、あなたの席ですか?」

アングルは、アップの女性に変わる。ロシア語スキットの常として、当然無表情だ。
「いいえ。違います。」

アングルは、ゴルゴチンピラ男を見上げる構図になる。いぶかしげな表情で彼が尋ねる。
「これは、あなたのハンドバッグですか?」

アングルは、女性のアップになる。
「ええ。私のハンドバッグです。」
イヤなことを聞くヤツだ、という表情だ。

アングルは、再びゴルゴチンピラ男を見上げる構図になる。あいかわらずいぶかしげだ。
「では、雑誌のあなたのですか?」

アングルは、女性のアップになる。
「ええ。雑誌も私のです。」
ますますイヤなヤツだ、という表情だ。

最初の正面からの全体が見えるアングルになって、女性が手荒く無言でハンドバッグと雑誌をどかす。
ゴルゴチンピラ男がズッと座席に座って、何か言う。
「どういたしまして。」
女性が目もあわさずにそう答える。

2人とも、窓の外を見る。その視線の方向は、2人とも違う。

ロシア人というのは、こういうものなのだろうか?
なんか、毎週毎週スキットで出てくるのはいつもこういう人ばかりなのだが。
どうしてみんなそんなに攻撃的なんだろう?彼らには、人間らしい感情とかはないのか?


ウラジミール某のコーナーは、今日が4番だった。映像は人が乗る馬だったり、高原の斜面を群れる馬だったり、空を飛ぶ猛禽類だったりした。

「大尉は勘のいい人だった〜〜〜彼には僕の夢の意味が分かった〜〜〜」
「『大変だ、消えてしまう』と彼は言った〜〜〜」
「『向こう見ずな君が』〜〜〜」

どうやら、大事だったらしい。なんだかショックだった。
やっぱり、帽子を飛ばされるようではダメか。黒毛馬とも、もうさよならなのか。
さようなら。向こう見ずな君。


いったんテレビの電源を落としたが、ちょっとして「トムとジェリーとゆかいな仲間」のことを思い出した。
再びテレビをつけたときは、7:12だった。

「ゆうれい迷路の最終コース」

というサブタイトルで、またあの自動車レースだった。
悪役とその品の悪い飼い犬は、わざわざ高い崖の上に登って他の競技者の車を大きな岩で押しつぶそうとして逆にその車の非常用巨大バネの力ではね返されたその大岩に潰されてしまったり、オバケ屋敷で別の競技者を脅かそうと先回りして、そこでホンモノのオバケに脅かされたりしていた。
僕は、3分で再びテレビの電源を落とした。


静寂に戻ってみると、やっぱりまだ早朝に感じが気配が支配的だった。
朝霧の細かい粒子のようなものが、大部屋の窓の外から今日は僕のベッドにまで漂って来ている。

(今日はこういう日なんだろうな)

そう僕は思った。

01/06/24


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