早くキューバに戻れ
今日のスペイン語は、いまいちだった。
まず、スキットのシーンが魅力的でなかった。
「私は、踊りのグループに入りました。」
マヤが言う。複数のラテンと日本人の男女がどこかのひろびろとした公園で密集して踊っているシーンになった。
まだ、日本のシーンなのだ。もう日本の話はいい。
・・・異様なのだ。日本のデカい公園で、昼間から密集してサルサを踊られていると。
しかも、まわりに他のグループの姿は見られない。彼らはひろびろとした空間で、まるでイモを洗うように踊っている。
考えられないシーンだった。
すると、赤子を抱えたラテン女性がやってくる。新キャラだ。
予習したから僕はもう知っている。彼女はベネズエラ人だ。
「こんにちは。」
「あなたは踊るのが好きですか?」
「そんな聞き方しないで。親称二人称でいいのよ。」
なんて、さりげない会話がなされる。
なされるのはいいのだが、日本の公園である。
だいたい、コイツら、いつも日本で踊ってばかりだ。もう見飽きたよ。
公園だったり、どこかの店だったり、誰かの家だったり、と場所こそ違え、やってることはまるで同じだ。
マヤは4月の頭から、いったいいつまで回想シーンに浸っているつもりなんだ?
日本はもう梅雨入りだぞ。
このスキットのタイトルは「いとしのキューバ」だろう。
日本で踊っていた記憶より、キューバだろ。どうせ踊るなら、キューバで踊れ。
さっさと気持ちを今自分がいるキューバに戻せ。僕はキューバが見たい。
あんまり回想シーンが続くので、いいかげんイヤになってきた。相手が「スペイン語会話」でも、言うときは言うぞ。
これ以上回想シーンが続くようなら、企画に問題がある。前に中国語会話で触れたけど、スキットの魅力は重要なのだ。
彼女はマヤに誘われて踊り出した。
ときおり、赤子の手を振りまわしたりもしていた。赤子は、笑うでもなく、泣くでもなく、喜ぶでもない複雑な表情をぐるぐると繰り返した。びっくりしていたのだろう。
ところで、このベネズエラ人女性は、どういう経緯でこの場所にやって来たのだろう?
予習をしたときには文字列だったから気にならなかったが、スキットドラマを見ていると明らかに異様だ。
彼女は、赤子を抱えて、ひとりで、この広い公園に来て、密集して踊っている彼らを見つけるのだ。
彼女は、どうやってここに来たんだ?赤子を抱えてまで、何の事情があってこんなデカい公園の奥底にまで来たんだ?
それほどの事情を放り出してまで、踊りだしてしまっていいのか?いくらラテンだからって、そんなんでいいのか?
彼らに偶然出会う確率も、ほとんどボイジャーが気象衛星ひまわりに衝突するのと変わらない。平たく言えば、近似値が0だ。
とにかく、非常識なシチュエーションと、ありふれた日本の光景、いつまでもメンバーを替えずに踊りつづける男女にもう飽きた。
あんまり続くようなら、もうスキットは見ないぞ。
その他、今日のカルチャーコーナーではアルベルトが5曲歌う、とテキストのほうに書いてあって僕はかなり期待していたのだが、放送が始まってみると、どういうわけかアフロペルーの有名歌手が日本に来てライブをやった、という内容に変更されていた。
このアフロペルーおやじ(おやじ、だったのだが)が、とんでもないデブで、しかしその一方でペルーでは大人気らしく、その厚木のライブハウスはペルー人でごったがえしていたが、あまりにデブで自分を支えられずずっと座り込んでブツブツ歌っているオヤジの映像は、およそ魅力的でなかった。
どうして、突然内容が変更になったのだろう?
「アフロペルー」というのが、おそらくキーワードだろう。
先週までのアフロペルーダンサーのオズワルドさんシリーズが、おそらく異常に好評だったのだ。
それで、たまたまアフロペルーを代表する歌手が来ている、ということで、ちょうどいい。こいつを使ってしまえ、アルベルトはレギュラーだしいつでも使える、なんていうことだったのだろう。
しかし、僕としてはあのオヤジより、アルベルトの歌を聴きたかった。
つまり、僕にとって、アフロペルーおやじは魅力の対象ではなかったのだ。
だいたい、「アフロペルー○○」というジャンル自体が、「ペルーでもちょっと趣が異なる」というところでアクセントだったのだ。
オズワルドさんとその周辺はすばらしくよかったが、こんなオヤジまで紹介してもしょうがない。
厚木のライブハウスの映像も魅力的ではなかったし、音楽も魅力的ではなかった。客のペルー人にも興味は持てなかったし、なによりこのオヤジに興味がもてなかった。
僕は、今朝予習をしたときそれを知って、その時間から仕事をしている友達に、わざわざ、
「今日アルベルトが5曲歌うらしいですよ。」
とあわててメールしたぐらいなのだ。
「英語ビジネス・ワールド」を見ているときに「今日のスペイン語会話見ましたよ。」というメールが彼から返ってきたとき、僕は申し訳ない気分になった。
でも、今日のこのコーナーでひとつだけよかったものがあった。
彼に取材に行ったジン・タイラのコーディネートである。
彼はインタビューしているあいだずっと座っていたのでスラックスのことまでは分からなかったが、とにかく黒単色でまとめ、ジンの魅力であるクセのある黒髪とあいまって、その色白の横顔にエキゾチックな雰囲気を醸し出していた。
スペイン語おたすけマン「のり」は、今日はお疲れな様子だった。
なんだかロレツもまわっていない感じだったし、言うこともいまいちキレが悪かったし。テンパったように両手を広げて、目を剥いたシーンもあった。
イザベルとアルベルトに画面をバトンタッチするときなんか、「ああ、しゃべり終わった。ホッとした。」というような表情を見せたりしていた。
およそいつもの「のり」とは思えなかった。
まあ、おたすけマンにもいろいろあるのだろう。
「カンタンなカンタン文」とか3回もくりかえして言うのはさすがにどうか、とは思ったが。
でもむしろ、「どこか体調が悪いのではないか」とすら思ってちょっと心配になった。
まあ、いつもいつもおもしろすぎる、というわけにもいかないだろう。
仕方がない。ユベントスだって、悪い試合をしてしまうこともある。
先週がおもしろすぎた、とも言える。
批判ばっかりのようだが、おもしろいところもあった。オープニング、エンディングは(いつも同じだから当然なんだけど)いつもどおりよかったし、今日はJorgeだけでなく、Richardもヤラれ役になっていた。
そして、もうひとつ、僕がおもしろいと感じたものがあった。
視聴者からの便りだ。
「私は67才で、千葉県のどこそこで踊りを教えています。そこに、新しくコロンビア人女性が踊りを教わりにくるようになりました。私は、これまで休憩時間としていた10分間を、彼女がみんなにスペイン語を教える時間にしました。私が書いたスペイン語を、彼女が読むのです。お金を貯めて、3年後に彼女の案内でコロンビアを旅行することが私の夢です。」
というのが、その内容だった。シーラちゃんが読むその手紙はわりとサイズが大きく、彼女が持つ紙の裏側に字が透けて、その手紙の筆者の等幅太字密集フォントの気配が読めた。
筆者、コロンビア人女性、踊りを習う他の人それぞれの熱のバランスを変えながら、状況をいろいろ想像してみた。
しばらく退屈しなかった。
夢って、いいな。
01/05/30
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