「聞いてくれよ、ポール!」
ハイスクールで顔をあわせるなり、サンチスはうれしそうな声で僕に話しかけてきた。
「何度デートに誘ってもまるで相手にしれくれなかったきまぐれ屋のパオラが、『こんどの週末、時間あいてる?』って、むこうから誘ってきてくれたんだ!ま、他にも2人ぐらい来るっていうし、ダブルデートみたいのだと思うんだけど。」
「そいつは、よかったな。これまで努力した甲斐があったってもんだ。楽しんでこいよ。」
僕はそう言って、彼の幸運を祝福してやった。
週明けの朝、教室で僕は彼と会った。
「おはよう、サンチ。ダブルデートはどうだったかい?」
僕がそう聞こうとするより早く、彼は自分から得意そうに話しだした。
「彼女の家に行ったらね、みんな楽器を持ってきていてさ。僕はそこで、びよらを渡されたんだ。『音は出さなくていいのよ。適当に調子を合わせて、びよらを弾いてるフリだけしていてくれればいいから。』って。どうやら彼女は、弦楽四重奏の真似事を、ちょっとやってみたかっただけみたいだったんだ。」
「それで...?」
「言われたとおりに、やったさ。そりゃ、そうだろ?」
「びよらを弾く、『フリ』だけ...?」
「ああ。だって、彼女がそういうから...。」
「君、そのときに、ちゃんと言ったのかい?! 『僕は12才のころからびよらを弾いてるんだ』って!」
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びよらじょーく
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