あんぐら

「お嬢さん、もしもし、お嬢さん。」
「え...?あら。さきほど市場でお会いした方ではありませんか。こんなところでまたお会いするなんて、びっくりですわ。」
「ははは。偶然なんて、そう何度も起こるものじゃありませんよ。」
「さきほどは、どうもごちそうさまでした。」
「いえいえ。」
「こうしてまたお会いできるなんて、夢のよう...。それにしても、どうやってここまで入ってきたのですか?それに、どうしてここへ?」
「なに、入ってこようと思えば、簡単にできるものですよ...。僕はね、あなたのハートを盗むためにここまで来たのです。」
「まあ!シビれてしまいますわ!お上手ですこと。」
「心臓どころか、すべてを持っていってしまおうと思っている。」
「そんな、どうかおやめくださいませ。クラクラしてしまいます。ああ...。でも、私、あなたが何をしてらっしゃる方かもまだ存じ上げませんし...。」
「いや、やめてくださいと言われたぐらいで、いまさらやめるわけにはいきませんよ。お嬢さん...、僕はね、臓器売買のブローカーをやっているんです。あなたがシビれてクラクラしてきているのは、さっき僕が紅茶に含ませた薬がようやく効いてきたからなんです。」


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