from Missouri

from Missouri

そのまま解釈 ミズーリ州から来た
慣用句としての意味 猜疑心が強い、証拠無しでは信用しない
採集場所 英検1級Pass単熟語(旺文社)
なんじゃソリャ指数 ★★★★★
とりあわせ指数 ★★
慣用句度 ★★★

これはスゴい...。スゴすぎる。
「ミズーリから来た」 → 「猜疑心が強い」 です。
しかも、採集場所は、英検1級対策の、かなり信頼できる問題集。

例文までついています。
Harold won't believe you. He's from Missouri.
(ハロルドは信じないよ。疑い深いんだ)


人を出自で差別してよいのか!ていうか、ハロルドって、どんなヤツなんだ?!
ていうか、出るわけないデショ。こんなの。
本当に出題されたら、外交問題にまで発展しかねない。
ミズーリ出身のハロルドさんから、ミリオン・ダラー・ロースーツを起こされるかもしれない。
通常ならばジュリスディクションは日本ですけど、旺文社や英検協会の米国出先を訴えるかもしれない。集団訴訟を起こして、「原告団の著しい不便を考慮して、米国で裁判」とかいうことになるかもしれない。
そうなったら、たとえ日本法で裁判をしても、負けです。

この慣用句、「こんなモノ絶対に出ない」とタカをくくって、僕は覚えようとはしませんでした。
(残念ながら、一瞬で覚えてしまいましたが (^^; )
でも、せっかく覚えましたけど、自分で使おうという気はおきません。


こういう地域コンテクストな慣用句は、どうしてもノンネイティブにはピンと来ませんね。

「アイツは大阪出身だから、必ず一番安いプランを選ぶよ」
「彼女は名古屋の人だから、嫁入り道具がたくさんあって大変だよ。」
「彼は富山から来るから、置き薬と鱒の鮨を持ってくるよ。」


とか、そんな感じでしょうか。
ミズーリ州といえばワニだと思うのですが。あるいは、何かワニと関係あるのかもしれない。


マーク・ピーターセンの「続日本人の英語」に「ここはカンザスじゃないみたいよ」という章があります。
この章の主なテーマは、ユーモアのコンテクスト。


映画「オズの魔法使い」で、カンザスから愛犬トートーといっしょに夢の国マンチキン・ランドに飛ばされてきて、主人公のドロシーが言う台詞。

"Toto, I have a feeling we're not in Kansas anymore."
(トートー、なんだか、もうカンザスじゃないみたいだわ)


このシーン、米国人には大ウケするらしいです。
「カンザス = 何もない平凡の中の平凡」
というコンテクストが米国人にはほぼ共通しており、だからこそ、彼女の現実感を伴わないしれっとしたセリフが面白いのだそうだ。
というわけで、日本人に見せても、見た人間が特別なそういう事情に通じていないかぎり、ウケることはない。

ところが、これをカンザスのことを特に知らない英国人に見せても、やはりウケるそうです。
それは、もう明らかにカンザスとは違うマンチキン・ランドに来てなお、

"We're not in Kansas anymore." 
ではなくて、
"I have a feeling we're not in ... " 
という具合に確信が持てないような言い方をするところ、
"This is not..."
ではなくて、
"We're not..."
という具合に、犬と一体感を持った主観的な言いようをしているあたりに、彼らがユーモアとして魅力を感じるからであろう、と著者は書いています。
となると、このネタに反応するかどうかの閾値となるコンテクストは、地理的な知識というより、ユーモアのあり方へのそれということになるのでしょうか。

たしかに、言い回しは面白いです。
ただ、それが面白いと感じられるかどうかとなると、それはかなりレベルの高い話。
「ひょっとしたら面白いのかもしれないけど、本当に面白いのかどうか分からない。果して、笑ってよいものかどうか。」
というぐらいが、普通に英語が得意な人の反応でしょう。
ユーモアをユーモアとして捉えられるかどうかは、そうなると、語学力、文化的コンテクストも含めた総合的言語センスということですね。

そう考えてみると確かに、「名古屋の娘だから嫁入り道具が沢山だ」というネタを理解するのにも、必要なのは名古屋の嫁に対する俗説的認識ではなく、ユーモアとしてそれを解するつもりがあるかどうか、つまり、「どうせ冗談だろう」と思えるかどうかというところにあるような気がします。
著者はそのことを「オズの魔法使い」の例になぞらえて、「これが、別の世界にやってきたのが日本人の娘で、犬に向かって、『ここは岩手じゃないみたいよ』と言ったら、日本人も笑うであろう。」という具合に比較しています。
この人は、こういう比較の仕方が上手い。

この章では他にも、アメリカ人相手なら当然冗談で済ませられるはずのジョークを日本の地方でしたら大失敗した、というような著者自身の逸話を紹介しています。
「続日本人の英語」、「日本人の英語」ともどもお勧めです。
僕としては、コンテクストの違いがよく比較されている「続」のほうがどちらかというと面白いと思います。
Amazon等での書評を見ると、「日本人の英語」のほうが一般ウケは良いようですが。


おまけ;

alligator, crocodile, gavial の区別

alligatorアメリカワニ。
crocodilealligator に比べてあごが細長い。アフリカ産を指す。
gavialインドの大河に棲むワニの一種。体調約6メートル。

See you later, alligator.
"later" と "alligator" で韻を踏んで引っ掛けたさよならの挨拶。
「さよなら三角また来て四角」とか、そんな感じ。あるいは、「蟻が十匹、アリガトー」とか。

crocodile tears; そら涙
"crocodile" には、「そら涙を流す人、偽善者」という意味があります。
ワニはえさを食べるときに涙を流すと言い伝えられたことからだそうです。

おまけの出典は、小学館プログレッシブ英和辞典、和英辞典。


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