セレッソ大阪

セレッソ大阪


「ところでさ、『セレッソ大阪』って、どんなディフェンスするチームなの?」
「『セレッソ』??」

出し抜けにそんな質問をされて、電話のむこうの彼はかなり怪訝そうな顔をした。そりゃ、そうだろう。
僕だって、彼に同じような質問をされたら、とても驚くだろうと思う。
相手が彼なだけに。


僕には、その電話のだいぶ前から気になって仕方がなかったことがあった。
それは、前回、第12回TOTOの結果のことだった。

入院してから、TOTOをはじめた。
これまでJリーグなんて、まるで興味がなかった。テレビで見るなら海外の試合のほうが格段におもしろいし、生で見ているヒマがあったら、ジムに行ってトレーニングをしたり、自分でボールを蹴ったり、笛を吹いたりして僕は暮らしていた。

入院した今となっては、日々のトレーニングはしなくてよい、サッカーはしなくてよい、仕事はしなくてよい、ということで、時間もある。
もともとサッカーの試合の結果を予想することには前から自信があったし、どれ、やってみるか、という感じで、ちょっと取り組んでみた。

最初の1、2回はさすがに内容的にぜんぜんダメだったが、Jリーグ開催日前後のスポーツ新聞をしっかり読み、どういうチームがどんな試合をするのか分かってきた3回目の第11回では、3等10,330円ををゲットすることができた。

引き分けがない残念なTOTOだったが、僕が(0)にマークを入れた4試合はすべて延長戦に突入する、という完璧な予想だった。
はずした2試合のうち1試合は、ホームで快勝すると思っていたチームに、前半早い時間に退場者が出たようだった。
ただし、もう1試合のほうは、全然マークしていなかった選手が大活躍し、逆に僕が90分抑えきるのは難しいだろうと思っていた選手が活躍しなかったようで、僕の予想ははずれだった。

第12回では4つをはずした。
2試合はいずれ泥試合になる、と予想していたが、延長Vゴールになった挙げ句に結果のみ逆、というやむを得ない形。1試合はスポーツ新聞を読んでみたが、僕は反省していいのかよく分からなかった。

そして、もうひとつ、完全に僕の予想と違った試合があった。
セレッソ大阪-横浜戦である。

中村不在のマリノスはゲームの組み立てができる選手がおらず、セットプレーでの得点力も落ちている。ここのところの得点不足で監督からの信頼を失いつつあるFW陣にも、最近の試合どおり、ボールをいい位置で持てるチャンスがほとんどなく、マリノスはアウェイで終始苦しむ。取れて1点。
川口は大試合では強いが、この程度の試合ではたいしたパフォーマンスはしない。セレッソは120分のあいだに1点を取ることは、ほぼ間違いない。最終的に2点取れることもまあ期待できるだろう。

というのが僕のおおまかな展開予想で、マークは(1)(0)にした。セレッソの勝ちか引き分け、である。ところが結果は、

セレッソ (0) - (2) 横浜。

どういうことなのか、まるで分からなかった。
僕の展開予想が正しければ、マークが裏目に出るケース、というのは、

セレッソ (0) - (1) 横浜

以外、考えられない。しかも、そうなることはほとんどありえない、と踏んでいたのである。
なんとなくではあったが、「横浜が先制したとしても、それが試合終了間際でなければ、そのうちにセレッソが追いつくだろう」というイメージだった。
2点は、おかしい。

僕はこの結果を重視した。これは、完全な敗北である。
スポーツ新聞をよく読んでみた。

日本のスポーツ新聞というのは(スポーツ新聞に限らないが)、競技自体の経過についてはほとんど触れず、言ってみれば、

「選手、監督の口から、これほどまでに感傷的な発言が聞かれた。」

というようなことをひどく大袈裟に書いたような記事ばかりしか載っていないものだ。
それでもよく熟読してみれば、それなりにいろんな情報が拾える。

1点目は前半の早い時間、シュートがポストに当たって、それに城が詰めて得点、
2点目は後半、セットプレーから新人DFが頭であわせて得点、

ということだった。横浜の前半のシュート4本、後半3本。
セレッソは、試合全体で13本。

シュート数を見れば、やはり横浜にチャンスは少なかったようだ。

運がなかったといえばそれまでのようにも感じられないこともないが、やはり、なにか違うという印象を僕は持った。
セレッソというチームのディフェンスについての僕のイメージとこの記事から受ける印象とは、なにかの取り合わせが違う。
前半9分というまだまだ建て直せる時間に先制されて、なおかつセレッソが後半にみすみす追加点を許す、というのはまるで僕のイメージにない試合展開だった。

「セレッソがどんなサッカーをしているのかきちんと把握する必要がある」そう僕は感じた。
僕のイメージと何が違うのか感じ取り、イメージを修正しなくてはならない。
そういう芽を摘み取っていかないと、僕は永遠に、「予想通りには」TOTOで1等をゲットできないだろう。
もちろん、偶然になら当たるかもしれない。当たればもちろん金は受け取る。
だが、予想どおりの展開にならなければ、それは、僕にとっては真の勝利ではない。
僕が目指すのは、あくまで完全勝利だ。

ところが、ひとつ問題があった。
今の僕の生活の中に、セレッソを見る機会がないのだ。Jリーグ中継でセレッソはなかなか放送されないし、ダイジェスト番組の放送時間は、ほとんどがもう消灯時間だ。

「セレッソ、セレッソ・・・」

僕の頭の中の重要な懸案事項として、「セレッソ」という言葉がインプットされた。

そんなとき、イタリアでサッカーを観にいく道中出会った在阪のサッカーバカから連絡が入ったのである。
公衆電話に行って、テレホンカードを買って、僕は彼に電話をしにいった。

「Jリーグなぞ、知らん。」

というのが、彼の答えだった。
当然だろう、と僕は思った。彼は僕とドッコイのサッカーバカなのだ。
もともと、彼に聞けばすばらしい回答が得られる、とも思っていなかった。

彼の用件は、

「国立競技場って、どこ?」

というものだった。6月のユーゴスラビア-パラグアイ戦のチケットが取れたそうだ。

聞けば、今年は50日ぐらいかけて、また欧州蹴球観戦行脚をしてきたそうだ。
5ヶ国でさんざん試合を観戦した挙げ句に、少なくとも他にクロアチア、トルコにも行って来たらしい。
聞くからにハードな旅行だ。あまりリアルに想像していると、病室の僕のベッドにも、パスポートを預かりに車掌が本当にやってきそうだ。

ミラノからパルマに向かう列車の中ではじめて彼と出会ったときのことを、僕は思い出した。

僕と彼は現地で適当に拾った日本人と3人でパルマのホテルをシェアし、パルマ-フィオレンティーナの試合を観戦し、翌日早朝にトリノに移動して、そこでさらに2人の日本人を拾って、さんざん値切り倒して5人でシェアするホテルを確保してからユベントス-ローマを観戦しに行った。
最初に拾った日本人君は、料金交渉の事情で、そのトリノのホテルでは床にカーペットを敷いてもらって、自分のダウンジャケットを掛け布団にして寝た。

僕はさらにその翌日にローマに向かった。彼は同じ列車を途中で降りたあと、たしかフランスを抜けて、プレミア・リーグを見に行くとか言っていた。
そのあと、オランダに行ったんだっけ?いや、どうだったかな?僕と会ったときは、スペインリーグを見てからだっけ?そのあと見にいったのだっけ?
何か、とにかく短期間の間に驚異的な移動をするという話だった。
そのときにも「ムチャクチャハードなヤツだな」という印象を持ったのだ。

そのときにも、「去年も欧州蹴球観戦行脚をしてきた」というようなことを言っていた。
ということは少なくとも、3年連続なんだな。
いや、さらにその前もやっていた、というようなことを聞いた気もする。
よく覚えていない。

とにかく、変態だで、クレイジーだ。特別な何かがなければ、人間そこまでできるものではない。

「いや、もうええわ。さすがにキツかったわ。もう、こんなん、やらん。」
と、電話のむこうで彼は言った。僕には、これから彼があれほどまでの欧州蹴球観戦行脚はもうしないのかは、よく分からない。

「トルコ、ええで。絶対オススメや。」
彼はそう言って、楽しそうだった。

ありゃ、またトルコか、と僕は思った。
その日、僕は旅行好きの看護婦さんに、トルコのすばらしさと、彼女の友人のトルコ人ハーフの女の子がいかにかわいいか、ということを力説されたばかりだったのだ。

セレッソ大阪のディフェンスの問題は、まだ解決されていない。

01/05/24

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